【情に訴える】ことわざ・味な言い回し
“本是同根生,相煎何太急”
魏の曹操の死後、王位を継いだ曹丕は、並外れた文才を持つ弟曹植を強く妬み、脅威に感じていた。
自分の権力の座を守るためにライバルの弟を亡き者にしようと謀った曹丕は、
曹植に無理難題を持ち出した。
「おまえは才気煥発だというではないか?ではそのおまえに命じる。
七歩行く間に詩を一首作れ、作れなければ、君主を欺いたかどで死罪に処す」と。
窮地に追い込まれたものの、わずか10秒間で曹植は詩を作り終えた。
立て板に水を流すように詠んだのが
萁在釜下燃,豆在釜中泣,本是同根生,相煎何太急
qízàifǔxiàrán,dòuzàifǔzhōng,bĕnshìtónggēnshēng,xiāngjiānhétàijí
→豆がらは釜の下で燃えており、豆は釜の中で泣いている。
同じ根から生まれた兄弟同士なのに、兄はなぜ私に危害を加えようと、こんなにも焦っているのか。
釜の中で泣いている豆(曹植)に構わず、盛んに釜の下から炎を上げて豆を煮ている「豆がら」は、
ほかでもなく曹丕を当てこすっています。
熱湯に煮られて豆から盛んに気泡が噴き上がるさまを「泣いている」と巧みに表現しています。
不義にして非情な肉親虐めを暴露された曹丕は、やむなく曹植を無罪放免にしたという。
陰惨な骨肉の争いを告発し、兄弟の情に訴えた曹植は、この咄嗟の作詩によって人生最大のピンチを切り抜けたといえましょう。
「芸は身を助ける」とはこのことですね
* 煎 jiān;煮る/苦しめる
* 急 jí;焦る”
【その他の用例】
▲家乡的水真甜!
→故郷の水が一番美味しい!
緑豊かな里山から湧き出る泉水は口当たりがよく、美味しいのも頷ける話です。
但し、里山の生態環境をしっかり護ることが大事ですね。
▲月是家乡圆
→故郷の月が一番まん丸い
▲月是故乡明
→故郷の月が一番明るい
乡情 xiāng-qíng(=故郷への思い/里心)から発する故郷への賛美は、万人に共通する感情の自然な発露です。
故郷を離れて他郷にある人が月を眺める時、懐かしい故郷の山河や、幼時から慣れ親しんだ一木一草にまつわる思い出、
会いたくても今は会えない家族や親類縁者など、さまざまな情景が脳裏に甦り、もろもろの思いを月に託す。
だから、月はことのほか明るく感じられ、まん丸く見えるものと解釈できましょう。
(つづく 鄭青榮)