中国語あれこれ

中国流 説得スタイル ー表現解説集【第3話(J)】

《 中級会話エリアの穴場 》
【第3話(J)】(続)経験則・生活の知恵で説得するスタイル

“春捂秋冻,老了没病”
/春先には冬着のままで保温に気を付け、また晩秋にかけては薄着のまま体を冷気にさらす。
そういう生活習慣の人は健康で、老後も病気知らず

【経験則・生活の知恵】に関することわざ・格言・成語など

春捂秋冻,老了没病 chūnwŭ-qiūdòng,lăo le méi bìng
→春先には冬着のままで保温に気を付け、また晩秋にかけては薄着のまま体を冷気にさらす。
そういう生活習慣の人は健康で、老後も病気知らず

これはまさに数千年の経験則を踏まえた中国人の生活の知恵から生まれた諺です。
しかも僅か8文字のフレーズなのに、情報量がこんなに圧倒的!!表意文字である漢字のパワーが漲っている感じではありませんか!
春先は朝晩の気温差が大きく、また「寒の戻り」もあるので、薄着すると風邪などに罹り易い。
晩秋はそれほど寒くないので薄着で暮らしても、病気に罹りにくく、むしろ寒い冬を目前に体の抵抗力を強化できる。

大気の温度変化や季節の変わり目が持つ二面性を睨みながら、着衣の多寡を適切に処理することは大事な健康法だというわけ。
聞く者になるほどと言わせる合理性を具えた言い回しだ。四季の衣替えの最適タイミングから老後の健康維持まで見通している。
この緻密にして遠大な視点と思考方法は中国的特色が際立っています。

天地の間を周期的に去来する季節、その季節の中で健康で快適な暮らしを希求する人類
——春には春の衣服、夏には夏服、という一般的な衣替えの常識を覆すこの諺は、逆説として鮮烈な新味を漂わせているが、
その根底に中国古来の「天地人合一(宇宙・地球・人類は一体のもの)」という巨視的な立体思考が根底に横たわっているように感じられる。

語注 :
捂 wǔ;【動詞】しっかりと覆う
=凍

(つづく 鄭青榮)