中国人が相手を説得するのに用いる表現フレーズには、さまざまなスタイルやタイプがあります。中でも「物事の筋道」がよく引き合いに出されます。「人生の道理」も同じく日常の話の中によく登場します。いわば、常識・理屈で教え諭すように相手を説得し納得させるわけですが、説得力を強めるために、「経験則」や「生活の知恵」を説くタイプのものも多い。
したがって、これらフレーズを学習することを通じて、中国人の基本的な物の見方、考え方や、人に接する態度、対人関係の処理の仕方、並びにその思考方法を知ることが可能となります。同時に、日本人や日本社会のそれと対比して、相互間の共通性や相異性を探ることも相互間の理解促進や誤解解消に役立つはずです。
このほかにも、【道徳・道義心に訴えるスタイル】や、【利益誘導するスタイル】、【情に訴えるスタイル】などがあります。とりわけ、【情に訴える説得フレーズ】は人間の心の動きに密接に関連するので、注目すべきポイントではないかと考えます。そうした感性・感情の特徴がよく表現されているフレーズは、中国人の心理および人間関係の処理の仕方を理解するのに役立つに違いありません。
それでは数回に分けて順次に紹介してまいりますが、今回は常識・理屈で説得するスタイルのフレーズ、並びに中国的特色が濃厚な“应该 yīnggāi(助動詞)”を取り上げます。
1. 这是你应该做的。
2. 孩子是无辜的。
3. 军人就不是人吗?
4. 你现在还年轻,将来的路还长着呢。
5. 人都有老的时候。
6. 总有一天我们都会老的。
7. 人生有很多事情是不能改变的。
8. 我们都是时间的过客。
9. 人生就这么一辈子。
10. 我们都得好好儿活着。
語注:
●应该 yīnggāi;【助動詞】(筋道・道理・道義からみて)当然…しなければならない/…するのは当然だ
●无辜 wúgū;【形容詞】罪がない/無辜の
解説 :
▲例文1 “这是你应该做的。zhè shì nĭ yīnggāi zuò de.”
→これはあなたが当然しなければならない事柄です。
▲例文2 “孩子是无辜的。háizi shì wúgū de.”
→子供に罪はない。
*性善説の立場や、未成年は大人と社会が護るべき対象との観点から子供を善良無辜だという言い方。
▲例文3 “军人就不是人吗? jǖnrén jiù bù shì rén ma ?”
→軍人だって同じ人間ではありませんか。
*たとえば、世の中には、「軍人は所詮兵器であり、戦場で殺傷を働く凶器だ」という考えがあるのに対して、「軍人とは、読んで字の如く、人間であり、兵器ではない」とか「軍人の職業は軍務だが、みなと同じ生身の人間である」と一般常識を説く言い方。“不是……吗? ”は反語形式 。
(次回につづく/鄭青榮)